振り向いた先、あたしの視線の先に居たのは予想通り神部で。


「ボケッとなんかしてないし。何か用?」

「何か用?じゃねぇよ。」


苦笑を零しながらあたしの横に来ると、勢い良く出した冷水で汗が流れる顔を洗う。ときおり撥ねる水滴が、あたしのジャージを濡らした。

…――何だ。あたしに、用があった訳ではないのか。

顔を洗っている神部を見てそう判断し、その場に背を向ける。でも別に用がないのなら、わざわざ話しかけてこなくてもいいのに。


「片倉。」


けれど足を踏み出した刹那、あたしを呼ぶ声に反射的に足は止まった。