淡々と紡がれていく事実に、口出しなんてできなかった。否定することさえも、躊躇われた。

全部知っていたくせに、気づいていたくせに、わかっていたくせに。

でもそうは思うのに、「それならどうして、私と付き合ったの?」その言葉を突き付けることは、何故かできなくて。


「……そうだよ。私、本当は大谷くんのこと、大キライだった。」


代わりに紡いだのは、大谷くんを拒絶する残酷な言葉。自分でも驚くほどにすんなりと、でもハッキリ吐き出された言葉に、何故か私の胸が痛んだ。


「笹川、先輩……、」

「大谷くんなんて、大キライだよ。」


そう言い捨て、大谷くんの顔を見ることなく走り出す。冷たい雨が、全身に打ち付けた。

…――大キライ。
旭ちゃん以外の、全ての人が。

そう思いながらも痛み続ける胸は、オカシイくらいに矛盾してるけど。

その矛盾を裏付けるように、私自身、何が本音なのか嘘なのか、ハッキリわからなくなっていた。





【CHAPTER:05/side*SHIZUKU/END】