大谷くんはやっぱり、優しい人だった。

未だ捻挫が良くならない私を気遣ってさりげなく荷物を持ってくれたり、部員の身でありながらも今の私では支障が出るマネ業を快く手伝ってくれたり。

本当に、こんな私にはもったいないくらい、いい人。そんな人に偽りの気持ちを押し付けてる私が、何だかとても醜いものに感じた。

そして当然、そんな大谷くんだからこそ、普通に女子にもモテるんだ。
私が大谷くんと一緒に居る時間が増え、大谷くんと私が付き合っていることが学園に広がったのはあっという間。さらに、いじめに火が点いた。

女の醜い嫉妬を全開にして、憎悪が込められた瞳が常に私へと向けられる。


「何でアンタが、大谷くんと付き合ってんのよ。」

「どーせ、アレでしょ?しつこく媚びまくって、無理矢理に付き合ってもらったんでしょー?」

「きゃはは、ありえるー。大谷くんって、押しに弱そうだしぃ。」


…――うるさい、な。

確かに、言われていることは間違いなんて無いけれど。女子特有の、甲高い声も笑い声も、私は好きじゃない。旭ちゃんだって、嫌ってた。