*
時は少しばかり後の事、油小路にて御陵衛士を待ち構えている永倉と原田は息を潜め思案していた。
何故か胸騒ぎが止まない。
それに、少しばかり計画に遅れが出ているようで隊士達も落ち着きがないのだ。
「新八、近藤さんは上手くやってんのかね?」
「…あっちには土方さんがいる、下手は打たねえだろうが。 何でだろうな、さっきから汗が止まらねえ」
冬だと言うのに、じんわりと嫌な汗が背中を伝うのだ。
緊張の表れなのだろうが、その緊張は何から来るものなのか。
誰にも気付かれないよう息を吐いた永倉に原田は言う。
「新八、矢央は此処に来たがったんじゃねぇか?」
「ん? ああまあな。 やっぱり平助に会いたいんだろうが、あいつには荷が重いと思って残ってもらったよ」
「平助のことは助けると言っても、きっとこれが最後になるだろうからな。 平助も、会いたがったかもしれねぇな」
「それは仕方ねぇさ。 あいつが選んだことだし、俺達は平助を逃がすことだけ考えよう」
「そうだな」
御陵衛士が来るまで、あと少し。
*
「んー、近藤さん、この酒相当良いものですね?」
伊東が全く酔わないので、土方はとっておきの強い酒を出すように指示をした。
そのおかげか、その酒を一口飲んだ伊東の眼はキラキラと輝き上手い上手いと次々と杯を明けていく。
引っ掛かった! と安堵し、更に様子を伺い時は更けていく。
「気に入っていただけたようで嬉しいですよ! ささ、もっと如何ですか?」
「んん、これ以上飲むと足にきそう、なんですが、まあ今宵は特別な夜です! もう少し、もう少しだけ」
特別な夜?
土方の方眉を上げ、やはり伊東はわざと酒の量を調整していたなと知る。
何か企んでいるのは分かったが、今見る限りは先程のように余裕があるようには見られなく、相当酒が気に入ったのか、譫言のようにもう少しと言いながらも、酒の進みは良い。
上手く行く。
伊東の顔をこっそり見れば、ほんのり頬を染めゆらゆらと体を左右に揺すっている。
もう少しと言ったところだろう。
ちらりと近藤に視線をやれば、近藤も小さく頷いたのが見え、土方はそっと襖を閉めると静かにその場を後にした。



