廊下に立つ柴本亜希は、矢楚の変化の、一つの現われ。 色白の女顔で身長も伸び悩んでいた矢楚が、ここ最近、男らしく変貌を遂げてきたことに付随して起こる、煩わしい事柄のひとつ。 昨年の秋ごろから矢楚の背はぐんと伸び、体はごつごつと、そして声変わりを終えた。 急激な成長をサッカー選手としては喜んだのだが、精神的には戸惑った。 体の急激な変化は、日に日に強くなる性への関心と分かちがたく結び付いていたから。 時に、性の衝動の押さえがたさに、矢楚は大きく心揺れていた。