「週三のパートだけどね。すっごく、おいしいパン屋さんなのよ」 楽しみでしょ。 小さくほほえむ母の目は、強い力に満ちている。 これを、自信、と呼ぶのかもしれない。 「新しい出発よ、広香。 今まで、ごめんね。 お母さんが、二人を立派に育てるから」 繰り返し誓うように言った母の力強い表情が、急にぼやけた。 広香は、生まれて初めて、嬉し泣きをしていた。 私たちにも、春が来た。 広香は胸いっぱいに満ちていく歓びに、 母娘の語らいもどこ吹く風の柊太を、横から強く抱きしめた。