寝汗を流し、寝癖を直すためにシャワーに入った彼は、

「えらい。俺、超えらい」

 と、一人虚しく自分を褒める。

 ラブホテルに入って、手を出さなかったのは始めての経験だった。

 何なんだ、このデートは……。



 蒸し暑くて気だるい日曜の朝。

 ホテルから出るとセミが割れるような音でミンミン鳴いている。

 朝だというのに車はサウナ並に熱されていて、二人が乗り込んだのはエンジンをかけてから3分後だった。

 出発前、ナビをセットしようというとき。

「お願いがあるの」