ダブルベッド


 約束したのに……なんだよ、もう。

 落胆しながらも、とりあえず近くに寄ってみる。

 服もそのまま、化粧も落とさないままで、口を半開きにして、スースー寝息を立てていた。

 長いまつげがベッド脇のライトを受けて、下まぶたに影を作っている。

「池田さん」

 呼び掛けてみたが、ピクリともしない。

 今なら……何をしてもいいかもしれない。

 なんて思ってしまう。

 試しに

「桃香」

 と呼んでみる。

「ん……?」

 わずかに反応したことに驚いたが、やはり起きる様子はない。

 それをいいことに、充はゆっくりと手を伸ばした……。