イライラというか、モヤモヤというか、ムラムラというか……。
胸に詰まった感情を少しでも解消するように、充は風呂場の壁を叩いてみた。
もういっそこのままやってやろうか。
そんな衝動にも駆られるが、自分で提案した予防策は守らねばならない。
「桃香に今度も嫌われたくない」
という思いから張った予防線ではあったが、思ったよりも苦しいものだった。
風呂場での仕事を終えた充はドアの前で一旦ため息をつき、緊張しながら部屋のドアを開けてみた。
部屋には有線で今流行りの曲が流れており、テレビなどはついていないようだった。
テレビとベッドくらいしかないこの部屋で、桃香は何をしているのだろうか。
などと思いながら一歩足を踏み入れてみると……。
桃香の体は、ベッドに埋もれていた。
シーツも被らず左端のほうで、横を向いて寝息を立てていた。



