入ったのは、インター近くのホテルだった。
生憎沢田が利用していたところの系列店ではないらしい。
充も桃香も終止無言で、案内のアナウンスだけが妙に響いていた。
変な気を起こすことを許されるはずのこの場所。
自分がソファで眠るということも考えてはいたが、部屋にはイスとテーブルはあっても、ソファは見当たらない。
一週間前、桃香の部屋ではぐっと堪えたが、こんなところでどう耐えろというのか。
充は部屋に入るなり、桃香の手を強く引いて、ベッドに座らせた。
「きゃっ」
という声。
早くも試練的な感情が湧き上がる。
「いい? よく聞いて」
「うん」
桃香の手には力が篭っていた。



