ダブルベッド


 赤らんだ顔。

 潤んだ瞳。

 それらが酒に起因しているとしても。

 充には、カン違いの材料にしかならない。

 桃香は何も言えず、口を半開きのまま固まってしまった。

 今なら、ちゃんと眠るからという口実で連れ込むことは容易だろう。

 だけど今までのように、そんな風にはしたくなかった。

「ほら。簡単にそんなこと言っちゃダメだよ」

 充は軽くため息をついて、窓を少し開けてタバコに火をつけた。

「でも、命には代えれないから」

「だから、覚悟があるって?」

 桃香はまた黙ってしまう。

「そんなことになったら、ね? わかるでしょ? 俺、何もしない自信、これっぽっちもないからね」