奈緒は桃香の腕に巻き付いて、 「予定が狂ったのよ。だって二人に会ったんだもん」 「だからって……」 「ももちゃん、一緒に美味しいお酒飲もうねー」 奈緒は桃香にくっ付いたまま先に歩き出してしまった。 「沢田さん」 「なんだ」 「既に尻に敷かれてますね」 「……うるせぇよ」 充はふと思い返した。 沢田と奈緒が現れるまで、桃香とは気まずい雰囲気であったことを。 彼らの出現がなければ今ごろは、重い空気の中で窮屈なドライブをしていただろう。 彼らとの遭遇はありがたい偶然だった。