それは、
「美人席の女は、男関係がこじれると退社する」
というものだ。
急に辞めた前任の女性も、
「男と別れて病んでいる」
と言われてすぐに退社してしまった。
その前に務めていた女性も、当時の所長との不倫関係が発覚し、二人揃って辞めたらしい。
その前も、そのまた前も。
美しいけれども、退社理由に男の影。
ジンクスとはあながちバカにできないものである。
そんな曰く付きの美人席に座る池田桃香に、所員である木下充が一目惚れ。
桃香が配属されてきたその日、充は密かに懐に忍ばせておいた辞表をシュレッダーでゴミへと変えたのだった。



