たとえば、
「車を運転している姿がカッコイイ」
と雑誌で読んだから、自分の運転する姿を見せたかった。
なんてしょうもない理由がひとつ。
ふたつめには、桃香を送ったついでにまたあの部屋にお邪魔しようと考えていた。
そして何より、車は二人きりの密室になる。
邪魔者はいない。
しかし今となっては、その密室が気まずくて仕方がない。
いつ運転のダメ出しをされるか……。
さしずめ桃香は教習所の教官のような存在である。
そんな充の気持ちを察したのか、桃香はこの重い空気を震わせた。
「ごめんね、木下くん」
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