「うん……、実は事故を起こしたことがあって」
その声からは、
「それ以上聞かないでくれ」
という感情が聞き取れる。
充は大人しく、教習通りの運転をすることにした。
下手に言い訳をしたり言い返したりして、桃香の心象を悪くしたくないと思ったからだ。
それにやっぱり……真面目に運転しない自分自身に、少しやましさを感じたから、というのもある。
車内は必然的に静かだ。
二人の沈黙を埋めるようにBGMが流れている。
充はこの時点で、電車移動にしなかったことをとことん後悔した。
車での移動を押しきったのは、それなりにやましい考えがあったからなのだ。



