ヒールのサンダルのおかげで、桃香の顔がちょうど充の肩に乗っていた。 そのままの体勢で、桃香が耳元で囁く。 「あのね、ひとつお願いがあるの」 「なに?」 「この間実家に帰ってきたんだけど、あたしの部屋、随分放置されてたみたいなの」 「うん」 「掃除したんだけど、それでもたまに虫が出てきたりするの」 「うん」 「今日ね、家を出る前。大きなクモが出てきちゃって」 「そりゃ大変だ」 「だから、ね……?」