「俺の好きな女が、泣きながら言ったんだ。あんたを忘れられないって」
涼しいそよ風が頬を掠めるだけで、誰も返事をしない。
そういえば、桃香も言っていたっけ。
そこに涼太はいないみたい、と。
しかし、彼に通じるのはここしかないのだ。
「あんたがどれだけ愛してたか知らないけど、俺だって負けてないと思ってる」
墓はピクリとも動かず、ただしんと佇んで、充の声を反響させた。
「俺は、生きるよ。たとえ事故に遭っても、病気になっても。池田さんより、一秒でも長く」
充は立ち上がり、石を見下ろした。
そして握っていた手を、思い切りそれにぶつける。



