ダブルベッド


 いつだったか桃香が言っていた。

 生きろと言われて、死ぬこともできないと。

 うそつき。

 できてるじゃないか。

「木下くん?」

 声がした方を向くと、桃香がうっすらと目を開けていた。

「池田さん……」

「どうしてここに?」

「見舞いだよ」

 桃香は起き上がろうとして、母親がそれを手伝う。

 桃香の左手首には分厚く包帯が巻かれていた。

 どうやらそこを切ったらしい。

 母親は気を使ったのか、

「小用があるから」

 と席を外した。