女のもしも話には不思議な力がある。 もし、もし、と想像力を掻き立てられると、あたかも自分がそうしなければいけないような気になる。 冷静なうちはのしかかってくる責任や経済的負担の重圧に押しつぶされるくせに、女はもし、もし、とそれを軽くしていく。 男なんて、女のいい様に操られているのかもしれない。 桃香だって、そうやって彼を操って結婚に持ち込んだのかもしれない。 けれど充は、それを羨ましいと思った。 現実と戦っている今の桃香は、決してもしもの話なんてしないのだから。 第七章