ダブルベッド





 外回りを終え、営業所に戻る夕方。

「戻りました~」

 充がダルそうに言うと、

「おかえりなさい」

 と桃香が微笑む。

 そして少し視線を動かすと、ハゲ課長がこちらを睨む。

 充は逃げるように給湯室に駆け込んだ。

 しかし。

「おつかれ~」

 妊婦の先客がいた。

 タバコが吸えないじゃないか。

 などと文句を言う度胸はない。

 妊婦佐和子は悠長に携帯をいじりながら、パック入りのフルーツジュースをすすっている。

「お疲れさまです」

「キノピーさぁ」

「はい?」

 キノピーとは充のあだ名である。