桃香は無言のまま、ただギュッと左手を抱き締める。 充は次にかける言葉を探しながらじっと様子をうかがう。 もっと自分を見てほしかった。 桃香の視線の先にはいつでも彼がいる気がしていた。 彼女はきっと、今でも夢見ている。 彼との幸せな未来を。 そしてこの部屋で一人、彼の帰りを待っている。 このベッドで一人、彼の夢を見ている。 果たされない約束だと知りながら、それを認めることができないまま。 充は結局言葉を見つけられなかった。 そして。