桃香の体からフッと力が抜けた。 充が顔を上げると、桃香の顔がカクッと左に傾く。 潤ったままの視線はクローゼットの方に向いた。 「俺を見て」 顔はそのままに視線だけが充に向けられる。 「俺を見てよ」 「……見てるじゃない」 「そうじゃなくて」 充は桃香の顔を両手で包む。 充の指に涙が触れた。 「ちゃんと見て。遊び相手とか、セフレとかじゃなく、ちゃんと」 「何言って……」 「好きだ。その彼が池田さんを思っていたのと同じくらい。もしかすると、それ以上に」