ダブルベッド


 桃香の薬指が、ダイヤの指輪で輝き出す。

 小さなダイヤがいくつか埋められたそれは、美しい桃香にとても似合っている。

 しかし。

「あたし、もう彼だけを――……」

 充が動いたのは条件反射だった。

 決定的な一言なんて聞きたくなかったのだ。

 充の右手は輝きを隠すように桃香の手を包み、唇はこれ以上言葉が溢れないように塞いでしまう。

 傾いた桃香は必然的にバランスを崩してベッドに沈んだ。

 軽く弾み、触れ合う部分にじんわりと汗が滲む。

 まだ夏は終わっていないのだ。