「あたし、木下くんみたいになろうと思ったの」 「え?」 桃香は鼻声で語りだした。 「色んな男の人と気ままに遊んで、独身でしかできない楽しみを謳歌しようと思ったの」 「独身でしかできない、楽しみ?」 「そう。でも、思うようにいかなくて」 力なく立ち上がり、落ちるようにベッドに腰掛ける。 充はドアの前に立ち尽くしたままだ。 「今日もね、男の人と会ってたの。先週も、その前も」 「それで?」 「みんな口を揃えて言うのよ。付き合ってくれって」 充は口をつぐんだ。 自分もその一人だ。