ダブルベッド


「池田さん……」

 涙は止まらず、どんどん溢れる。

 桃香はおもむろに立ち上がり、フラフラと寝室へと入る。

 充が追いかけると、桃香はクローゼットを漁り何かを取り出した。

 小さな箱、二つ。

 そのうち立方体の箱を手早く開けて、中身を取り出す。

 それをギュッと握り締めた。

「涼太……」

 両手を胸に押し当て、それを抱きしめるようにしながら膝をつく。

 充は入り口から中に入ることができず、ベッドの前で佇んだ。

 嗚咽を漏らす彼女に、かける言葉も見つからなかった。