打ちひしがれた。
桃香の言葉にではない。
充自身の言動にだ。
充は知っている。
広すぎるこの部屋に一人で住んでいること。
換気扇の下にある吸い殻を、まだ捨てられないこと。
毎週彼の墓に通っていること。
ダブルベッドに一人で眠っていること。
それを承知していながら、押し付けるように自分の気持ちをぶつけてしまった。
桃香の気持ちが自分に向かないという自分勝手な不満を解消するために。
この部屋へ入ることを許されているから、心へも進入することを許されているとカン違いをして。
気付けば桃香は涙を流していて、指でそれを拭っていた。



