ダブルベッド


 忘れられるものなら、もうとっくにそうしている。

 そう思った充は少しムッとして言い返す。

「どうやって?」

 心にも体にも、桃香はすっかり染み付いている。

 桃香は充の質問には答えない。

 答えられないのだ。

「幻想よ。あたしのこと好きだなんて」

「幻想なんかじゃない。現に俺は……」

「じゃあ言い方を変える。一時的で一過性よ」

「俺の気持ちは信用できないってこと?」

 そりゃあこの先絶対に気持ちが変わらないと言い切れるわけではないけれど。

 もう少しくらい向き合ってくれてもいいのに。