充は小さくため息をついた。 「どうして?」 「それも言ったじゃない。人を……彼を殺したからよ」 充の愚問に苛立つ桃香。 充は構わず続ける。 「それじゃ、もしそのことがなければ俺と付き合ってくれた?」 桃香がため息をつく。 「事故がなかったら、あたしは結婚してるのよ? 木下くんとは出会うこともなかった」 確かにそうだ。 否定のできない事実に無意味な憤りを感じる。 「俺はどうすりゃいいんだろう?」 「は?」 「池田さんへの気持ちだよ」