桃香に体ごと向き合い、息を止めて気合いを溜める。 まだメイクを落としていない彼女は、凛とした顔をしていた。 「良識があれば池田さんにこんなこと言っちゃいけないんだろうけど、ガキだからって理由つけて言うよ」 「なに?」 「俺と付き合って」 桃香は一瞬驚いて、すぐに険しい顔になった。 「イヤ」 そんなに嫌な顔をしなくてもいいのに……。 予想以上に厳しい返事は充の胸に突き刺さる。 「どうしても?」 「そうよ。言ったでしょ? あたし、もう誰とも恋愛する気なんてない」