ダブルベッド


 桃香は少し苦笑いをして、

「重苦しい顔」

 と答えた。

「最近会社でもそんな顔してるから、課長が心配してたよ」

「え? あの課長が?」

「うん。あの課長が」

 桃香はいつも飲み物を出してくれるが、今までは冷たいものだった。

 夜が少し涼しくなってきたからだろうか。

 今日は温かい紅茶だ。

「何か嫌なことでもあったの?」

「いや、何もない」

「そうは見えないけど」

「ちょっと……大人の壁にぶつかってるだけだよ」