ダブルベッド


 充に足りていないのは「覚悟」だった。

 社会人として役割を果たす覚悟。

 何かを守る覚悟。

 自分がどんな目に遭っても責任を果たす覚悟。

 充は将来なんて思い浮かべもしなかったのだから仕方がないが、突然見えるようになった世界は非常に厳しそうで、しかしそれは周りにとっては当たり前のようだった。

 ふと桃香がこちらを向いた。

 充の胸が鉛を詰めたように重くなった。

 彼女がふと笑う。

 充の胸は重いまま甘く揺れる。

 まるで心をマッサージされたような気がした。