充は腕をポリポリしながら、ドアを背もたれにしつつ、とうとう睡魔に負けてしまった。 かすかな風と遠くに聞こえる車の音が子守唄になったのだ。 その間にもう一ヶ所蚊に刺される。 充は無意識でその部分を掻いた。 それから小一時間ほどした時のこと。 エレベーターで上がってきた桃香は、自宅の前の異物に気づく。 見えたのは、明かりによって不気味に照らされた足。 それだけだ。 それが充だと知らない桃香は、あまりの異様な光景に恐怖を感じ息を飲む。 「まさか……死体?」