ピーンポーン 桃香がいないことをわかっていながら、充はインターホンを押した。 当然誰も出ない。 そこで力尽きて、充はドアの前に座り込んだ。 熱帯夜。 明かりの周りに虫が集う。 座ったまま町の喧騒に耳を傾けていると、いつの間にか腕が蚊にやられていた。 ポリポリ掻いて、眠気と戦う。 桃香に会いたい。 触れたい。 いや、他の男に触れさせたくない。 デート? そうではないことを期待してここまで来たのだ。 結果、まだ帰宅していないが。