充が帰路についたのは、11時を回ってからだった。 いつもは1次会が終了すると夜の街に消えてしまう所長が、今日は消えずに充と沢田を連れ回したのだ。 余計に飲みすぎた充は、酔った勢いで自宅最寄りの一つ前の駅、つまり桃香の最寄り駅で電車を降りた。 改札を出ると見慣れない町並みが飛び込む。 だがここから桃香の部屋に行けないわけじゃない。 充は酒のせいでフワフワする体を持て余しながら、目的地に向かって歩みを進める。 彼女がいるかどうかもわからないのに。