ダブルベッド


 所長は真剣な顔をしていた。

 普段はこんな表情をしないし目鼻立ちがハッキリしているから、妙に迫力がある。

 彼はすぐに笑顔にもどって、

「いや、ね。桃ちゃん、いろいろ事情がある子だからさ」

「知ってます」

「ああ、知ってるんだ。まぁそういうことだからさ。もうちょっと傷が癒えるまでは、無理なんじゃないかな」

「わかってます」

 脈がない。

 そんなことは充にもわかっていた。

 心の繋がりこそが大事な恋愛関係において、体の繋がりなんて……。

 この年になると、そう重要ではないことも。