エアバッグのせいで身動きできなかったけど、もがいてるうちに徐々に動けるようになって。 何とかかきわけて助手席までの道をこじ開けたの。 涼太の顔を見たかった。 でも、見なきゃよかった。 見えたのは、もう涼太じゃなかった。 怖いと思った。 「桃香……」 呼ばれても、返事ができないくらい。 だって医者でも何でもないあたしですら、わかったもん。 彼はきっと、助からない……。 手がスッと伸びてきたから、ギュッと握ったの。 そしたら、 「生きて……」 それが最後の言葉だった。