桃香がベッドに潜り込むと、充はその横に座った。

「入らないの?」

 と言うので、充も一緒に入ることにする。

 正直少し、戸惑った。

 桃香が殺したらしい、たしか野崎という男と使うはずだったベッドだ。

 寝転んでみると、桃香の匂いがした。

 桃香はこちらを向いて、うとうとし始めている。

「おやすみ」

 充が腕を伸ばし、抱きしめるように背中をさすると、桃香の目はすぐにまぶたを下ろした。

 恐らく、昨日はちゃんと眠れなかったのだろう。

 そんな桃香につられ、充もそのまままぶたを下ろす。

 静かな部屋には、外から伝わるセミの鳴き声が微かに響いていた。