ダブルベッド


 頭が真っ白とはよく言われるが、この時の充の頭は真っ黒だった。

「あたしが……殺したの」

 桃香の抱えているものがあまりにも重たくて、自分が張り切ったところでどうにかなるような気がしない。

 相手が生きていれば、いつか目も覚めるだろう。

 しかし、相手が亡くなっているならば、思い出はどんどん美化されていく。

 まして自らが殺してしまったとなると……。

 悲しみだけではなく、膨大な罪悪感まで背負っている。

 太刀打ちできない。

 なす術がない。

 敵うわけがない。

「結婚式まで、あと1ヶ月だったのに」