「ハハッ、ノロケっすか」

「ノロケだよ。悪いか?」

 さっきまでカッコ良かった表情がくしゃっとした笑顔に変わった。

 充はうらやましくて仕方がなかった。

「悪いっすよ。俺、フラれたばっかなんすから」

 冗談ぽく彼をつつけば、

「あ、フラれたの?」

 と軽く返される。

「でも、俺も粘れば……いつか、振り向いてくれますかねぇ」

 沢田はズズッとコーヒーをすすって

「さあなぁ」

 と遠くの方を見る。

 その言い方はどちらかというと、

「ダメなんじゃないか」

 というにおいの方が強い気がした。