沢田は納得している様子だったが、充の頭の中は、未だにハテナマークだらけだった。
「欲が生まれるっていうことは、希望が持てるっていうことでしょ。希望が持てるっていうだけで、その人は幸せなんだよ」
ということは、希望が持てないのは幸せでないということだ。
幸せになる権利がないと言っていた。
恋愛をもしないと言っていた。
彼女は今、何も希望を持てずに暮らしているのか。
一方、桃香と恋人同士になりたいと希望する充は、振られて辛い思いをしているけれど、それだけで幸せだということになる。
確かに桃香に比べれば、幸せなのかもしれない。
そう考えると、所長の話もスッと納得できた。



