ダブルベッド


 これにはさすがに男性社員が黙っていない。

「ああーっ! 所長!」

「何するんですか!」

「ズルい!」

 ハゲかけ課長は呆れた様子である。

「やめてください、所長」

 桃香が冷静に体を離すと、所長は残念そうに眉を下げた。

「えー、もう終わり?」

 充の視線はふと沢田に向く。

 彼もまた、課長と同じような呆れ笑顔を浮かべていた。

「エロオヤジ。あんた、いい加減セクハラで訴えられるよ」

 腕を組んだ佐和子が吐き捨てるように言うと、所内に笑いが溢れた。

 この所長にタメ口を叩くのは、佐和子だけである。

 彼女より所長の方が10歳近く年上だが、同期入社だそうだ。