ダブルベッド


 住宅地の角を曲がり、古びた階段を少し上がる。

 桃香は汗を流しながらも、慣れた感じで足を進める。

 照り返しが眩しい。

 桃香の向かう先がはっきりしたとき、充は思わず唾を飲み込んだ。

 目の前に広がる、何百もの石、石、石……。

 新しくて艶があるものは、日の光を反射して容赦なく充を攻めてくる。

 やがて目的の場所に到着した。

 割と綺麗なその石には、こう彫られていた。

「野崎家之墓」

 ここまで来ると、もう嫌な予感しかしなかった。

「これって……」

「あたしが殺した人のお墓なの」