私は比奈を抱き上げた。


「ありがと、沙紀。でも手を洗って来て? 
外はバイ菌だらけだから」

「はいはい。そうね。世の中バイ菌だらけよね」


比奈をお姉ちゃんに渡して、私は洗面台へと向かう。



そうよ。

バイ菌だらけ。

あんただって、感染したくせに。


そう思いながら、手を洗いうがいをする。

鏡に映る自分の顔は、どこか不細工だ。


心の中って顔に現れるよな、と思う。

今日は、和美とケンカしたから、尚更だ。


「ふう」


溜息を一つついて、私は自分の部屋に戻った。
お姉ちゃんと話す気にはならない。

追いかけてくる比奈を押しとどめるために、

「疲れたから少し寝る」

といって扉を閉めた。