「やっとすっきりできたから。……いいです」


涙声のその言葉は、精一杯の強がり。

彼は笑って腕を解いて、私に握手を求めた。


「俺たち、今同じ気持ちなんだろうな」

「……でしょうね」


ずっと忘れられなかった人に、ちゃんと振られた。

そんなロクでもない共通点、

嬉しくもないけど。


だけど、これで、あなたの中で、私はもう通りすがりじゃないでしょう?


それだけで、満たされたって言ったら、笑われるかな。


「帰ります」

「送ろうか?」

「いいです。……さよなら!」


私が駆け出すと、彼も大きな声で答えた。


「さよなら、沙紀ちゃん」

「さよなら!!」


もう一度、大きな声で答えて。

私は涙をぬぐって顔をあげた。