多分、服を脱げと竜治が言えば、全員オールヌードになったかも知れない。

「シャンパンはあるか?」

「はい、ドンペリがありますが……」

「ピンクでもゴールドでも構わない。どうせ俺も味なんて判らないから、とにかくどんどん開けてくれ。渡した金で足りなければここに電話して届けさせろ。」

竜治が渡した名刺を見て、黒服は、更に恐縮した。

今や、渋谷では飛ぶ鳥も落とす程に名が知られ始めている人間が目の前にいる。
銀座や赤坂辺りで遊んでいておかしくなさそうな人間なのに、渋谷辺りの安キャバレーなんぞに……

女達は仕事を忘れて嬌声を上げる。
テーブルには、豪勢なオードブルとフルーツが並ぶ。

シャンパンを開ける渇いた音が次々とする度に、サラリーマン達の席が白けて行く。

彼らは5分とせず帰って行った。

新たに四人の女が加わり、店内は完全に貸し切り状態になった。

したたかに酔った。
しかし、芯からは酔い切れていないのが、自分でも判った。

最初に渡した100万をあっという間にオーバーし、竜治はカジノから、その日の売上を届けさせた。

その店の一週間分の売上を僅か数時間で使い、竜治は表に出た。

雨足は強くなっていて、竜治は暫く井の頭線のガード下で雨宿りした。

急にジュリの声が聞きたくなった。

電話をしてみたが、ケータイの電源が切られていた。
留守録に、

『ジュリ、昨日はゴメン、怒っているんだったら許してくれ…』

と伝言を入れた。

それで切ろうかと思ったが、最後に、

『今度、デートしよう…』

と付け加えた。

上原に電話をし、ジュリはまだ仕事してるのかと確認すると、30分前に上がりましたと答えた。

雨の中をふらつきながら、ハチ公前迄歩いた。

交差点で止まっていたタクシーに乗り込み、富ヶ谷のマンションへ行くよう告げた後、先にドンキホーテに寄ってくれと言って、一万円札を差し出した。

ドンキホーテで、竜治は女物の腕時計を買った。

二十万近くするブランド物だった。