スターバックスに入り、いつもの席を捜す。

今日は混んでいて、何時も竜治が座る席は埋まっていた。

端の方に席を見つけ座ろうとしたら、後ろから声を掛けられた。

久美子だった。

「よかったら、こっちで一緒にどお?」

二人掛けのテーブルで向き合うように座る。
思いの外、顔が近い。

「最近、竜治さんて顔付きが変わって来たわよね。」

「顔が、ですか?」

コーヒーを口元に運び、ゆっくりと飲みながら、久美子の視線は柔らかな色合いを見せながら竜治の目を見つめていた。

「今の竜治さんて、すごく魅力的よ。」

「あんまりからかわないで下さい…」

「女に魅力的って言われると、さすがの竜治さんも勝手が違うといった感じね。」

「さっき迄澤村さんと一緒でした。」

話しの繋ぎで澤村の名前を出し、新しい仕事の件も喋っていた。

「当然、引き受けるんでしょ?」

「ええ…ただ…」

「ただ?」

「澤村さんは具体的に何をしろとは言わないんです。好きにしろの一言だけで…だから尚更責任が…」

「義兄らしいな…」

「一人でじっくり考えようかと思ってここに来たんです。」

「あら、じゃあ、私は竜治さんの貴重な時間を邪魔してる訳ね。」

「あっ、そういう事ではなくて…その…すみません。」

「何も謝らなくてもいいのよ。私の方から声を掛けたんですもの。そんな事より、新しい仕事の話し、もっと聞かせて。話しているうちに、何か閃くかもよ。」

久美子に乗せられるように、竜治は思い付くままを話していた。

久美子と話しているうちに、何だか迷いみたいなものが消えて行くような感じになった。

一時間程も話していただろうか、久美子がその店の場所に行ってみたいと言い出した。

「丁度帰り道だし、もう30分位付き合って。」

夜ではないにしても、久美子のような女と百軒店を連れ歩くというのは、何だか照れ臭い。

ぽつりぽつりと歩く人の殆どが、風俗嬢や店のスタッフ、そして客達だし、たまにカップルがいても、この時間帯は純然たるカップルは少ない。

「…竜治さん、百軒店って風俗店ばかりだと思ってたらこんな店もあるのね。」

久美子が目にしたのは、裏スロット屋だった。