鈍い……

かも知れないが、鈍い振りをしてる部分もある。

僅かな沈黙の後、竜治が、

「店、出なくてもいいぞ…」

と言った。

ジュリが少しビックリした表情をした。

「嫌だったら、仕事しなくていいぞ。お前の稼ぎとまではいかないが、これでも結構なもんなんだぜ。」

「急に言われても、声掛けた友達の事があるし……」

「その娘達はその娘達で考えてるさ。ジュリはジュリの考えで行けば良いじゃないか…て言うより、こんなふうになっちまったら、お前を店には出せないよ…」

「アタシが、お客さん、と、するの…嫌?」

「てめえの女が他の男に抱かれて喜ぶ奴がいるか?」

ジュリは、ニッコリと微笑み、抱き着いて来た。
裸で抱き合う二人に熱いシャワーが降り注ぐ…。

「あっ、お湯が目に入ったァ。」

心無しか、ジュリのはしゃぎ声が、何時も以上に明るい。

「でもさ、アタシ、昼間とか空いた時間何すればいいかな?」

「飯作る練習が先ず一番だな。後は、自分の好きな事してればいいさ。」

「…判った。」

シャワーの湯を止め、タオルを取ろうとした時、ケータイの着信音が聞こえた。

拭くのもそこそこに、ケータイを手にすると、澤村からだった。

(神崎、今家か?)

「ええ、シャワー浴びてたもんで出るのが……」

(それはどうでもいい…田代がパクられた…知ってたか?)

竜治の身体から一気に熱が逃げた。

「…いえ…容疑は…」

(詳しい事は後で話すが、妙な事にパクられた本人はブタ箱じゃなく警察病院のベットでオネンネしてる…アテネに今居るからすぐに来い。)

「判りました。」

ゾクッとした。

背後でジュリが様子を伺っている。

「出掛けるの?」

「ああ……澤村さんに呼び出された。シャツ出してくれないか。」

クリーニングされたシャツを竜治に渡すと、ジュリは、

「寝てないのに……ご飯だって……」

と呟いた。

「これからは、何時でもお前の料理食ってやれるから。」

竜治はそう言って、部屋を出た。