アモーレは、今田代が入っているホテルの向かいにある。

さすがに3Pの現場でシャブの売をする程、色ボケはしていないようだ。

「次は何をすればいい?」

(奴がホテルに入った後に俺からジュリに電話を入れる。そしたら、奴にもう一度電話をしてくれ。)
「ホテルの前からって言えばいいのね?」

(ああ…)

竜治は、ホテルの塀際に隠れて、田代が出て来るのを待っていた。

数分して、太った身体を持て余し気味にした田代が出て来た。

アモーレの中に入るのを確認すると、竜治はホテルの非常口を探した。

位置を確認し、扉を開けようとしてみたが、開かなかった。
内側から鍵が掛かってるのだろう。

ホテルの隣が改装工事のビルになっていた。
剥き出しのコンクリートから折れ曲がった古い鉄筋が出ていた。

鉄筋を動かしてみると、ぐらぐらとする。

抜けそうだ。

何回か前後左右に動かすと、簡単に鉄筋は抜けた。

先端がU字に曲がっていて、振り下ろすと、空気を切る音がした。

ズボンのベルトに差し込み、ジュリに再び電話した。

「今、奴はアモーレの中に居る。電話をしてくれ。」

(うん…)

「ジュリ…」

(何?)

「いや…悪いな…妙な事やらして…後はいいから、部屋に戻って飯でも作って待っててくれ。」

(作るって言っても、アタシ、インスタントラーメン位しか出来ないよ…)

「構わない…一緒に食べれば、インスタントでも旨いもんさ。」

(リュウちゃん……)

「じゃあ、後でな。」

急に優しくしないでよ……

そう言うつもりが、声に出なかった。

ジュリは再び田代に電話を入れた。

(おっ、さっきの姉ちゃんだな。部屋は205だ。早く来な…)

ジュリは部屋の番号を竜治に伝えた。

その後、何が起こるのか…ジュリは想像しない事にした。

想像すればする程、悪い胸騒ぎがするから……