ジュリとの距離を微妙に置きながらも、竜治自身の気持ちで言えば、ジュリに惹かれている事も事実だった。

ジュリに話した事に嘘は無い。

ただ、理由は無いが、澤村の義妹である久美子
に少しずつ惹かれている事も事実だった。

相手が高値の花過ぎて、自分の気持ちを素直に認められないだけだ。

当然、意識して他人にその気持ちを悟られないようにしている。

ジュリは、竜治の気持ちが自分以外の方へ向いていると感じている。

もっと自分の存在を竜治に植え付けたい……

その一心で、毎日客を取り、身体を与えた。

こうして頑張れば、きっとアタシの事を認めてくれる……

そういう期待の他に、竜治の嫉妬心が目覚める事も期待していた。



竜治の姿から、卑屈さが無くなって来た。
店が予想以上の売り上げを伸ばした事から来る自信が、知らず知らずのうちに竜治を相応の人間へと変えて行ったのかも知れない。

オープンして十日もせず、澤村の元に一千万近い現金を入れたのだから、周りからの目も変わった。

「澤村さんもいい若い奴を見つけたよな。ありゃあ、いずれ一番の金庫番になるぜ。」

「いや、もうそうなってるさ。」

組内の口さがない人間達は、やっかみと羨ましさを愚痴に変えて噂をする。

竜治に対して、皆、比較的良い感情を抱いていた。中には自分も竜治と関わる事で多少のおこぼれが貰えるかも知れないという下心から来る好意ではあるが……

しかし、そうは思わない人間も現れる。

どの世界にでもある話しだが、自分の存在を脅かす者を廃除したいと願う者は
必ず存在するものなのだ。

僅か一月足らずの間に、そういった兆候が現れ始めた。

ある日、竜治が何時もより遅い時間に店へ顔を出すと、見知らぬ男が三人来ていた。
一目で堅気では無いと判る連中だった。

その男達に囲まれるようにして、上原が正座をさせられていた。