高級デートクラブ『エンジェルキス』の繁盛振りは、すぐに周囲の噂になった。
狭い業界だから、儲かってる所程、噂になるのは早い。
同業だけでは無く、働く女達の間でもそれは同じだ。
寧ろ噂の広まり方は、女達からの口の方からが、一番早いのかも知れない。
店が儲かる…イコール女が稼げる…誰しもが単純にそう考える。
スカウト連中が、引っ切り無しに竜治にアポを求めて来た。
自分が抱えてる女を売り込みたいのだろうが、竜治は、余程の女ではない限り、エンジェルキスで採用はしなかった。

ジュリは、エンジェルキスの一番の稼ぎ頭になった。

出勤すれば、すぐに予約で埋まる。
一度ジュリを指名した客は、殆どが日を置かずに又指名を入れる。

童顔でありながら、プレイはそこらのベテランソープ嬢顔負けのサービスをする……

ジュリはとにかく竜治に気に入られたい一心で、仕事に没頭した。

そうなる理由があった。

初めて会って以来、ずっと竜治の部屋で寝泊まりしているが、何故か竜治は自分を求めて来ない。
自分は竜治を好きになり始めているのに、想いが通じてないようにさえ、感じて来る。

一度、竜治にその事を尋ねた。

「お前を俺の女にしちまったら、店の商品に手を付けてしまった事になる。嫌いじゃないから、尚更今はお前を抱かないよ。」

そんな答えが返って来た。

たまにしか竜治は部屋に戻って来ない。
上原にそれとなく聞いてみると、事務所で泊まり込む事が多いという。

「二人切りになって手を出さないなんて余程の野郎かホモじゃない限り無理だぜ。気にすんな。お前の事は、俺も嫌いじゃないから。」

「ホント?」

「ああ…手を出さないのが、その証拠さ…普通だったらとっくにやっちまってる。」

そう言って笑顔を見せる竜治に、ジュリは益々惹かれて行った…